欠陥住宅はいま感染が拡大している新型コロナウイルスの発生状況と似ています。あなたが新築で建築会社から引き渡しを受けた時には静かになりを潜めていますが、ある程度の潜伏期間を置いて急に発病するのです。やっと手に入れた念願のマイホームで家族と暮らし始めた喜びもつかの間、さまざまな不具合や欠陥と同居しなければなりません。
さらに、欠陥住宅を修繕しようにも、そのような問題のある住宅をつくる建築会社は放漫経営ともいえる経営内容が悪いところが多いのです。さらに、欠陥住宅を建てたことがたたって会社は倒産してしまい、修繕することができない家に住み続けなければならないという最悪のケースに至ることもあります。住宅の中の欠陥は、それがどんな小さなものでも、新築のマイホームで暮らすあなたとあなたの家族の人生を憂鬱なものに変えてしまうものです。
欠陥住宅はなぜ生まれるの?
あなたとあなたの大切な家族にとって家を建てる、マイホームをつくるということは、人生において最大の事業であり最大の買い物です。35年もの長期間かけて返済しなければならない高額のローンを組んで、やっとの思いで手に入れたマイホームが欠陥住宅だったら、あなたはどうしますか?
かっては、新聞やテレビなどで大きなニュースとして報道された欠陥住宅ですが、最近は、大きな欠陥を持つ住宅のことはニュースになることが少なくなりました。しかし、実際問題として、欠陥住宅といえる問題のある住宅の建築や販売による被害はいっこうに減る気配を見せていません。ではなぜ欠陥住宅はうまれるのでしょうか? 欠陥住宅が生まれる原因は3つあるといわれています。
1、それはいい加減に行われている建築工事の管理・監理です。
ハウスメーカーや工務店など建築会社の中にはTVでコマーシャルをする、新聞広告をする企業を目にします。やはり名の知れた大手ハウスメーカーや工務店など建築会社に家づくりを任せれば安心という人々が多くいます。確かに大手ハウスメーカーや工務店など建築会社には長年の技術の蓄積があり、しっかりとした家づくりのノウハウもあります。しかし「テレビでCMを流している大手ハウスメーカーが建てる家はしっかりした家」という、多くの人々が抱くイメージ考には何の根拠もありません。
大手ハウスメーカーや大手工務店など建築会社は、自社のみで家をつくるわけではありません。顧客から家の建築を受注すると、建築する現場の地元の下請け住宅メーカーや工務店などへ工事を委託します。さらにそこから孫請けにあたる小さな工務店などに工事作業の委託が下りていきます。つまり、大手ハウスメーカーは「家づくりの窓口」という機能を果たしているだけで、実際の家づくりの工事は地元の工務店や専門職人・業者が行うというケースがほとんどです。
最近では「地産地消」という言葉をよく耳にしますが、戦前や戦後昭和30年代は、家を建てる施主がよく顔を知った地元の棟梁・大工に家づくりを委託して、その棟梁・大工が地元の材料・資材を仕入れてそれを使用して地元の気候風土に合った家を建てていたものです。これが本当の意味での「地産地消による建てまえ」でした。今の時代においては大量生産化された大手ハウスメーカーの家づくりでは、実際に家をつくる建築工事を担当する業者は施主・建て主の顔をみたこともなく建築工事現場で会っても挨拶もしません。これでは施主・建て主の希望や要望がハウスメーカーから実際に工事を担当する業者・専門職に伝わることが難しく、限界があります。
このような「重層的下請け構造」の大手ハウスメーカーや工務店など建築会社による家づくりのシステムでは、中間マージンばかりが増えてしまって、実際に家づくりの工事を担当する専門職者に支払われる工事費用や材料に使われる費用は結果的に元請けによるピンハネ分で少なくなってしまうのです。地元の専門職人・業者としても日々の生活がかかっていますので稼がなくてはなりません。なるべく手間と時間を省いて、たくさんの工事・作業をこなそうとします。結果的に質より量をこなす工事・作業の仕方になってしまいます。
その結果として手抜き工事が発生してしまいます。これは、実際に工事・作業をする専門職人・業者が意図的にわざと手を抜くということではありません。しかし、元請けの大手ハウスメーカーからの厳しいコスト削減要求・管理、スケジュールの順守優先管理が結果として、やむなく手抜き工事になっている場合が少なくないのです。この手抜き工事は欠陥住宅が生まれる直接的な原因となっていますが、下請けの専門職人・業者に手抜き工事をさせてしまう環境と業界の慣行、それが欠陥住宅を生む元凶となっているのです。手抜き工事が発生する背景には、とにかく“大量に建て、大量に販売すること”が使命とされている大手ハウスメーカーなどの「家づくり市場」「家づくり業界の慣行」などに問題があるといえます。
大手ハウスメーカーや工務店など建築会社の一人の現場監督が同時に担当できる工事現場の数にはおのずと限界があります。現場監督担当者は顧客と会社の両方の要望や要求を念頭におきながら、一生懸命にその役割を果たしています。をこなしています。しかし、現在のような経済状況の中、合理化が進み、社員数も少しずつ減って、結果的に一人あたりの仕事量が2倍、3倍と増加してきて、十分な工事の管理・監理、現場の指導監督ができなくなるのはいたしかたないことです。そんな状況にありながらも、日本の家づくりはこれまでの業界の環境:慣行が根本的に改善されることなくいまに至っています。
特に今から約35年前のバブル全盛期には、住宅の需要と供給のバランスが崩れ、供給が追い付かず、十分に修行を積んでいない未熟な専門職人でも、無理やり現場に投入されて工事・作業を行うような事態になりました。そのため、優秀な熟練した専門職人が不足することとなり工事・作業を下請けする方の専門職人・業者の立場が売り手市場・強くなり、技術力不足の専門職・業者に対してでも仕方なく工事・作業を依頼する事態となり、大手ハウスメーカーや工務店などの建築会社の経験のない若い現場監督では工事管理、現場の指導監督がしきれなくなり、様々な工事検査も満足にできない事例も多く発生したとのことです。